B感覚

『「機動隊、アガるよね」。友人が冗談めかして言う。サウンド・デモの最中、やつらに、あの大嫌いなやつらにぐるりと取り囲まれた中で踊っていると、バツもカミも食ってないのに、キックのひとつひとつが形を成してズンズンとボディーブローをかまし、ベースラインがグイングイン腰に絡み付いてくる。』
これは敬愛する音楽ライター磯部涼氏の「デモ=パーティ論」の部分。


MC5のコミュで以前書いたが、ある種のロックンロールのざわめきと主体の政治的緊迫は非常に近い快楽であり、MC5はそのことに気付いていた。磯部氏の感じたこれもおんなじ、ヒリヒリする武者震いに似たアレ。この感覚は、一つの向精神効果といってもいいだろう。カフェインやアルコールやニコチンとも違う合法的なハイだ。山登りや運転や潜水やダンスや格闘技とも似ているけれど違うし読書とも近いが違う。そうねアートをアウト・プットしてる気分にも大分似ている。


これを僕らは皆絶対、子供から大人になる間に、社会と対峙することで経験してきた。ギャングエイジのころ女の子へしたスカートめくり、秘密基地で食べた駄菓子、親の目を盗んでした買い食い、友人との万引き、隠れて吸ったキャビン、スクータやニケツ、担任や親に楯突いたこと、手に入れたAVと短ラン、初めての清らかじゃない交際へ至る欲動、恋愛の成功と失敗、初めて夢中になった洋楽、警察にお世話になってアガる状況。
自分へ世界が距離を詰め急に近付いてきた瞬間に脳の中でドキンとするアレだ。世界の構造に手を振れて、グラグラと揺すった感じだ。概念を改めてまさぐって自分以外とに差異を作った瞬間だ。

僕はこれを、今流行の政治哲学用語である生政治Bio-politicsに絡む向精神効果と考えた。エクスタシーのE、LSDのLならぬ生政治のBとか?

たけしの笑いやタモリの密室芸にはこのBが多く含まれる。世界への批評が生政治を作る。モンティーパイソンやスネークマンショーもB含有率は高い、松ちゃんも鋭いBを与えてくれる。ブラックな笑いは人間性への批評であり、それはグワァンと社会という意味が振らされたことなのだ。

緩くない舞台や映画だってBは多いし、私小説としてヒリヒリする写真や彫刻だってそうだ。レベルの付く音楽や絵画はBをドバドバ出してくる。アートとは本来、政治と別次元から人間を掘り起こし、権力が作る人間概念に対決を仕掛ける行為だ。神を否定し主体が世界に切り込むBな宿命だ。近代以降、全ての芸術がBのための行為だったと断言することも憚らない。


Bを求めない快楽趣味者も当然いるだろうし、そもそも快楽を必要としない人間もいることを知っている、無理強いしない。必要ない人は中世で生きていてくれ。けれど知って欲しい、Bとは世界を知覚する快楽でイキイキと生きる行為だと、人間を存在させる行為だと。

RLLというプロジェクトはB感覚をテーマにしている何かだ。うん多分、Bを出すセッティングだ、Bのバイヤーだ、Bの導師だ。楽しく生きるための何かだ。
参考:http://back.honmaga.net/?day=20000331


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  • By intellipunk / Feb 18, 2006 6:09 am

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