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窮民革命 PAN-ASIAN POOR MAN’S HIGH

窮民革命1
窮民革命2


 世界革命浪人(ゲバリスタ)を自称し、革命三馬鹿と他称された竹中労、平岡正明、太田竜は、竹中邸に赴き漢籍の心得ある竹中の手引きで膨大な蔵書から中華古典を引きながらの革命的水滸伝ミーティングを重ねていた。1971年5月に大島渚「儀式」をめぐるパネルディスカッションで、平岡「『水滸伝』の革命性」からの竹中の「『水滸伝』のある一面での反革命性」の応答がきっかけにはじまった流れは、6月には太田「二十一世紀への大長征」、7月には竹中「竜将軍への反歌」と平岡「百魔論序説」という各論が発表された。そして水滸伝を〈窮民革命〉として読みくだす共著の出版が1971年内には決まり、翌72年5月には富山で合宿も兼ねた「水滸伝」講演会も敢行していた。しかし太田は夏頃から徐々に「生活に困窮している」と原稿を引き伸ばし、最終的に年末には二人に不義をしてアジビラ風の訣別状を送りつけ「極右翼日本民族主義のイヌ、竹中労、平岡正明を撃滅せよ」と逆ギレの宣言をした。
 それを受けて平岡と竹中が一気呵成で書き上げたのが、『水滸伝―窮民革命のための序説』(三一書房・1973)だ。師走、竹中は走り書きの原稿を置き、年明け早々に汎アジア窮民革命運動を連環させようと急いでアジア最深部(琉球共和国、コザ暴動、金芝河、フェーダイン、モン族解放戦線、台湾独立革命軍、フクバラパップ、植民地窮民)へと旅立った。残された平岡が竹中を降霊して残りを書くことによってドゥルーズ&ガタリ形式のポリフォニックな奇書となった。
 竹中が旅路を急いだのは台湾を切り捨てる日中共同宣言(1972年9月29日)と韓国の朴正煕のクーデターである十月維新(1972年10月17日)という二つの反革命が背景にあった。急速に逆ルートを辿る時代に抗して、水滸伝から『ゲリラ戦教程』を読み込みつつアジア窮民革命戦線の導火線を手繰る竹中がいた。ゲバラの「キューバの革命は、チャチャチャ、パチャンガのリズムから生まれた」と引く竹中は、豊富な音楽的教養からこの窮民革命の導火線を嗅ぎ分けた。

 〈水滸伝における革命と反革命〉がいかに現代の革命運動の綱領になり得るか考察した本書は、後世の中華大陸での群盗、例えば孔子を追い払った大盗賊盗跖(支配思想儒教を革命するアナキズム的道教)や北宋の叛徒方臘(そのバッグにマニ教「喫菜事魔」秘密結社)、会(ホエ)=游俠集団や香港天地会を引き合いに数々の蜂起(漢末の黄巾起義、唐代の安録山の乱、宗代の王安石「収塩」と元末の張士誠の塩田車借の乱、ハルトゥーム=セポイ=太平天国=維新、太平天国の洪秀全とそれを南越の義和団へと引き継いだ劉永福、秋収蜂起と南昌蜂起が合流した井崗山の最初期共産党コミューン、台湾の二・二八起義、レッドスターアーミーとPFLPと68年世界革命水滸伝)を俎上に上げながら系譜化していった。そしてこの『水滸伝―窮民革命のための序説』は、1972年に訳されたボムズボーム『匪賊の社会史』を意識した反抗の源初形態論となっている。
 平岡はすでに「あらゆる犯罪は革命的である」という命題をブチ上げていたが、それをさらに敷衍し「〈窮民革命とは〉群盗野に満つるときである」とする革命綱領を見出す。水滸の流民革命というイメージ喚起力。窮民革命論とは一般に言われるような「疎外された窮民こそが革命の主体となりえる」という太田らの唱えたものではない。平岡正明が打ち立てた命題「あらゆる犯罪は革命的である」の核心部分である。

群盗が世に充ちることは、犯罪者がうじゃうじゃ簇生している状態を前提にしている。犯罪者は、窮民の、ルンペンの、浮浪人の浮浪するプロレタリアートの前衛的化身であり、攻撃的な転化である。この段階で建国せよ。文明によって殺された「野蛮人」、都市に集中する難民、放りっぱなしの重病人、あらゆる私有財産から見放された人々、これらの窮民の存在を、無条件に我が同胞と感じ、かれらを世界社会主義共和国の同胞とし、この同胞のためにたたかうことを意思表示したもの、これを世界革命浪人という。幻の国だって?ありもしない国家だって?ーその通りだ。国というか、戦線というか、われわれしだいで見えるようになるにしたがって、権力や市民社会からは見えなくなる幻の国が実在する。群盗満ちる時には幻の世界共和国が背びれを見せている。したがって義軍は世界社会主義共和国の建軍である。その戦闘形態はゲリラである。
(竹中労+平岡正明『水滸伝 ―窮民革命のための序説』)


 現代窮民。
 死にゆく大量消費の老人たちのツケを払うために、今を生きる若者たちは大量絶滅と海面上昇と灼熱の時代の窮民となった。いまZ世代は、気候変動に鈍いオトナに逆らって花金キャンパスストライキを起こす。犯行声明のショート動画を上げて、キャンベルのトマトスープをゴッホのひまわりにぶちまける。化石燃料反対のために自動車の街を、チャリで全車線ジャックするフランスデモをし、トー横キッズのごとくT.A.Z.化してだべって交通封鎖する。映えるバナーやバルーンが飾られるが、バビロンへのディスを壁にボムる。中央分離帯にシードをボムる。アノニマスもオペレーションする。奴隷商だった英雄の銅像を引きずり下ろす。監視カメラを潰し黒旗やパレスチナの旗をやたら振りまわす。学校や公園や大木やダムや基地や原発や炭鉱に座り込みをかける。先日マイナーの漏洩線(D&G)であるジュリアン・アサンジが解放された! そしてアンドレアス・マルム『パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか』を原作にした映画「HOW TO BLOW UP」が、FBIが「環境テロ行為を助長する」と警告を出すも全米興業でスマッシュボムした!
 燃える地球と自分たちの未来を憂いて義賊となる、その戦闘形態はゲリラである。これを平岡流には魔界転生という。水の惑星、地球を舞台にした「GAIA水滸伝」はすでに水面下で始まっている。汎アジアの窮民たちよ、いまが転生の時である。


by intellipunk



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