失業軽茶と菓子

天気がいい。しかも仕事は休みだ。有給休暇を1ヶ月に10日使うという暴挙の最後の日。昨日のクボタケシ@dommuneのDJが素晴らしく、その余韻もあってサルサを聴きながらモノを探している。あまりに多くの時間をモノを探すのに費やしている気がしてる。まあ、いい。

ドアをノックする音がする。うちにはチャイムがないのでしょうがないがノックの音はいつも暴力的でびびる。しつこいので仕方なく出る。「和久井」と名乗るおばちゃんが「地球を破滅させるモノを破滅させる布教活動をしています」」とまるで回覧板をもってきたかのような気軽な節回しで言ってきた。ボクは「間に合ってます」と反射的に常套句を使ってしまったのだが、すぐに地球を破滅させるモノを破滅させることが間に合っているというのはなんだかおかしいなと思いなおし、とりあえず「応援はしてます。頑張ってください」と言っておいた。これが和久井さんの仕事なのだ。

そう言い放った後に頑張るのはボクのほうじゃないかと思いはじめた。明日仕事に行くとそれからは無職なのだ。再び失業生活がはじまる。

職場は去り方が肝心だ。ほっぺたが落ちるような美味しいお菓子を職場のみんなに配りたい。美味しいモノのイメージとボクのイメージを残る方たちの記憶の中に結びつけて消え去りたい。



模索舎の月報に歌舞伎座追悼の意味も込めてこんな文章を書いたのが悪かった。最近、人生に影響を与える文章を書いていると自負している。読者ではなくて書いた本人の人生を変えてしまう文章ってことだが・・・・

弁天小僧菊之助(歌川豊国).jpg

「失業カルチャーを生きる」

高く伸びるためには、根は野蛮の底まで沈んでいなければならない。  
きだみのる

気付くと界隈は失業者だらけ。これではまるでゆるやかなストライキだ。失業常態時代の幕開である。どうせ正社員になってもロクなことない。あと何十年もこの会社で過ごすなんて考えるだけでゾっとする。しかも正社員だからといって一生安泰なんて保証はどこにもないんだから。このご時世、いつ会社が潰れるかわからないし、それより先に激務であなたが潰れるかもしれないし。会社にしがみついて生きることは一見安全のように見えるけど、実はすごく危険なことなのだ。何があるかわからない激動の時代を身動きせずに一本の収入源に絞って生きるなんてまったく危機意識が低すぎる。これからは、高みを目指す植物のように複数の絡み合った根を地中深くにぶちこんであらゆる手段で養分を吸収していかなくちゃ。失業者の生活に求められるのはこのような野蛮な「向上心」である。正直働いている暇なんてないのだ。真の暇人は根を張り巡らせるのに実に忙しいのだから。

失業から生まれる文化というものがある。いまや日本伝統芸能の花形面している歌舞伎だってもともとは失業カルチャーである。関ヶ原の戦いを最後に失業した武士たちは、しょぼくれた生活なんて選ばず、その有り余るエネルギーを傾くことに注いだ。カブキ者の誕生である。カブキ者の時代は踊りの時代でもあった。16世紀初めにリリースされた歌謡集『閑吟集』には「生真面目にしかつめらしく暮らしていて、何の役に立つのか。人間の一生なんて、どうせ夢のようなはかないものではないか。ただただ踊り狂って生きるがよい」というメッセージソングが収められており、この「憂世」から「浮世」への大転換が日本における最初のサマー・オブ・ラブだといわれている。そのムーブメントの中から出雲のお国という河原者の大スターが生まれ、彼女のカブキ踊りが現代の歌舞伎のルーツになったのである。

失業カルチャーという側面から歌舞伎を見るときに「ヤツシ」という概念は重要だ。身分を降格させて、本来の生活状況とは違う生活状況に生きる人物のことを「ヤツシ」という。ヤツシにとって大切な点は単に下降した生を生きるということだけではなく、下降した生を生きながらも、本来の生を保持していることである。気高き失業者は現代のヤツシ者だといえよう。ボクは自らを「河原貴族」と称して失業生活を楽しんだ。


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  • By harpobucho / Jun 24, 2010 7:36 pm

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