夏の新作は「世界の都市」シリーズ第一弾!

海外旅行する金がないので、「勝手に観光協会」みたいなノリで行きたい街のPR Tシャツを作ることにした。それで満足することにする。いや、実はその国の大使館から航空券が送られてくることを密かに願っているんだけど・・・

第一弾は思い出の地タンジール。タンジェって呼び名のほうがメジャーかもしれないけど、ビートニクの翻訳ものに倣ってやはりタンジールと呼びたい。

芸能界から麻薬を根絶させる、というシャブっぽい当局発言を今朝ワイドショーで聞いてわが耳を疑った。いったい歴史から何を学んでいるのか。「悪所」は秩序を維持する側にも必要でしょ。

悪所タンジールに思いを馳せる。
いい旅になりそうだけど、モロッコ大使館にとってはいい迷惑だろうな。

RLL46
http://www.rll.jp/hood/tee/rll46_tangier.php

「世界の都市」シリーズ第一弾!

タンジールはモロッコであってモロッコでない。スペインからジブラルタル海峡を隔てた、アフリカ大陸の北西の端に位置するこの街は、古代の昔から外国の侵入者たちから支配のたらい回しを受けてきた。モロッコに返還された1684年以降もスルタン(イスラム王侯)が代々支配を続け、第一次世界大戦の勃発直前には、西側帝国主義諸国の手により分割され、各国が共同で委員会を作り行政を運営する国際管理地帯となる。列強諸国の領事館や郵便局が次々と開設され、多数の外国人が暮らすコスモポリタンな街として名を馳せることとなる。税関や警察は多国籍の混成で、指揮系統はぐちゃぐちゃのカオス状態。関税はタダで、殺人や強盗などの深刻な犯罪以外は基本お咎めなしの自由度の高さを誇った。

第二次世界大戦後になると、好景気にあおられて、アウトローたちが大挙してタンジールに押し寄せる。自由港では、密輸業者や鉄砲・火薬類の密輸入者、海賊の末裔や、武器屋を営む元ナチス将校ら戦犯たちが我物顔に振る舞い、街中では本国からの送金で暮らす怠け者、法曹界から除名された弁護士、資格を持たない医師、聖職を追われた司祭など、ありとあらゆる「だめ人間」が男爵や貴婦人になりすまし、官能的な喜びに満ちた環境の中で過ごした。

1947年にその道の先駆者、作家のポール・ボウルズがこの地に外篭りを始めてから、多くの西洋の知識人が続々とやってくるようになる。トルーマン・カポティ、テネシー・ウィリアムズ、ウィリアム・バロウズ、ブライオン・ガイシン、アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアック、ティモシー・リアリー、ジャン・ジュネ、サミュエル・ベケット、フランシス・ベーコンなど顔ぶれは多彩だった。

なかでも現地の悪童たちから「見えない男」と呼ばれていたバロウズの麻薬漬け生活は伝説で、男娼専門売春窟で一年間、風呂にも入らず服も着替えず、服を脱ぐのは一時間ごとに筋ばった身体に注射器をを刺す時だけという不摂生の極限を生き、後に『裸のランチ』を生み出すことになる(他に足のつま先だけを見つめて一年間とか、伝説は絶えない…)。

ボウルズの茶会(もちろんビートニクが隠語でいう「茶」のこと。モロッコでは「キフ」「マジューン」などと呼ばれる)でバロウズと意気投合し、彼のカットアップメソッドを共同開発したガイシンは、「千夜一夜」という名のレストランを開店、後にブライアン・ジョーンズがハマることになるジャジューカ出身の楽士をいち早くフィーチャリングし、呪術的な生演奏でタンジールのナイトライフを妖しく盛り上げた。

いかがわしい評判で鳴らした最高にフリーキーなこの港町も、1956年に独立国家となったモロッコに返還されてからは、とりとめのない観光地に衰退していく。売春婦や密輸業者、ぼろ儲けしていた銀行家などは蜘蛛の子を散らすよう消えていくなかで、ボウルズだけはその地に留まり続けた。ベッドの中でキフの影響下にある摩訶不思議な小説をタイプライターに打ち続けた。欧米から訪れる無粋な客を強烈なマジューンでもてなし、死にたくなるほどぞっとするような音楽をかけて愉しんだ(ボウルズは優れた音楽家でもあるのだ)。『タンジール通信』誌に自らを「ボランティア団体ヒューマニティーインターナショナル渉外部長」と名乗り、安心して自殺できる方法や、子猫料理のおいしいレシピなどナンセンスなジョークを読者に投げかけた。1999年に没するまでイルな異邦茶人としてタンジールに居続けたのだ。

背徳の街タンジールを胸に刻む。「安全・安心」の名のもとに不穏と不安を助長する街作りが進む東京でタンジールを着る。タンジールの元祖だめ連たちは、刑事訴追を受けることが実質上ないという国際統治都市の特権のなか、報復措置に脅えることなく「安全・安心」に本能の赴くままのびのびと生きていた。息苦しいバビロン暮らしのなか、タンジールというエキゾな響きに酔い、超現実的なノスタルジーに浸るのもいいだろう。あるいは、ジュネが「アメリカ人でない者は、それがどこであっても見つけ次第アメリカ人から物を盗まなければいけない」とモロッコ人作家に語ったように、金持ちの在留外国人に快楽として消費された側の心理と倫理に想像力をめぐらせ、バビロンを狡猾に生き抜く術を学ぶのもいいだろう。

2バージョンのTシャツをタンジールへ捧げよう。一つ目は、背に往年1938年の地図を配したデザイン、旧市街メディナの壁をイメージしたライトベージュのボディ。もう一つはモロッコタイルの模様を大胆にバックプリントしたデザイン、カラーはアッツァイ(ミントティー)をイメージしたグリーン。どちらもフロントはシンプルにTangier


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  • By harpobucho / Aug 12, 2009 2:49 am

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