10年越しの恋、実る。

10年片想いの女の子に思い切ってコクったら、実は10年前からあたしも好きだったのと言われたときの感情とはこんなものだろうか。

勝新太郎と勝プロダクションに恋して10年。大きな歓びとともに、なんで今まで告白しなかったんだろうという後悔の念が大波になって押寄せている。出会えるチャンスは一年に一回程度。毎年、上野や浅草のハッテンバにコッソリ現れるあのコ。もう、捕まえた。一生離さないよ。瞼に焼き付けたから。いや焦げ付いたったって感じか。

仕事の出勤時間を18時という超重役出勤に変更してもらって、池袋新・文芸座に『顔役』を観にいく。いつもは自転車だが、雨が降りそうだったので電車に乗る。情報ジャンキーは、電車中の広告をチェックしないと気が済まない。シャブカルチャー雑誌『プレジデント』の見出しに思わず噴き出す。「人間付き合い革命」。わーmixi特集だー!「高生産人間 VS 低生産人間」。わーバトルだ!

まるで天下の人間様がロボットのような扱いだ。彼らから見ると、ボクらなんて低生産人間を量産することを企み、革命を阻止しようとする反動野郎に映ることだろう。いつから人間はこんな粗末な扱いを受けるようになったのだろう、っと湿気と人ゴミで深い不快な車内で考える。そんなとき「人間がいます。聖●新聞社の本」ってフレーズが目に飛び込む!こっちもニンゲン革命!あー電車に乗るのはこれだから嫌だ。漢字表記の革命って文字も嫌だ。電車というハコは、眠気と疲労で意識が朦朧としている通勤労働者にネオリベ/シャブリベ洗脳するための空間なんだな、と考えているうちと池袋に到着。「岡崎」のつけ麺を3年ぶりくらいにススリ、バビロン解放戦線のナカマといざ、新・文芸座。

この映画館は小学校のころの旧文芸座時代から知ってるハコだし、映画パンフレットマニアだったハーポ少年のお気に入りのハコだった。勝新のほうにも縁がある。麻薬取締法違反で逮捕されて銀幕の世界から離れた時期に立ち寄った、彼にとってもゆかりのハコだ。そのときのトークショーに立ち会えなかったことがこの恋を酷くこじらせた。

だが、今日、やっと会って交歓/交感した。それは鑑賞や視聴ではなく、圧倒的な体験だった。内的体験?無理をして前から二列目に座る。見辛い。でも、これが体験するためにはいい。現実世界もそう見やすくできていないからだ。

告白を前に急に緊張してきて便意を催しトイレに駆け込む。用をたしてる最中に始まりのブザーがなる。やばい!またチャンスを逃す!駆け足で戻ると、映画はすでに始まったおり、オープニングからカッコ良過ぎて、でも、暗くて自分の席が見つからなくて、スクリーンを見るべきか、座席を探すべきか迷い軽いパニックになる。無事、席に着くともう、目の前には顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔といい顔のオンパレード。毛穴までくっきり。さすが顔役ってタイトルだけある。勝新の目から見える凄まじい世界を2時間たっぷり体験して、ボクらはすっかり消耗しきった。勝プロを携帯メールのアドレスにするほどの勝プロ好きと、勝プロに就職しようと考えたほどの勝プロ好き二人は、まるですごい体験をしたパーティの朝のような気分で感想を述べ合った。株式会社勝プロダクションは、プレジデント的世界観とは真逆な価値観<蕩尽>を示してくれる。倒産するための会社。やばいはずがない。マイッタ。

二本目、勅使河原アシッド宏の『燃えつきた地図』は、本当にさっきの映画で燃えつきたので後方に下がりチル気味に観る。前の映画の後遺症で話の筋が追えない。ただただハッとするシーンだけを追う。勝新と渥美清の正月映画スターの共演にハッとしたり、若い中村玉緒のお姫様のような美しさにハッとしたり、若い市原悦子の色気にハッとしたり、実兄若山富三郎の迫力にハッとしたり、40年前の新宿の風景にハッとしたり。

結論。この世には、洗脳するためのハコと解放するためハコがあるって話。どっちのほうで多くの時間を過ごすかで人生の豊かさが決まる。プレジデント的な世界観を目指すか、勝新的な世界観を目指すか。どっちも極端過ぎるんだけども。

あと、映画好きと一度でも公言したことがある人は、『顔役』チャンスあったら体験しといたほうがいいです。


  • HarpoBucho
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  • By harpobucho / Jun 27, 2007 3:39 am

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