2008′S BEST BOOKS & iTEM

RLLの選んだ2008年のBEST BOOKSとBEST iTEMを(ようやく)発表します!

本は正直、昨年は豊作だったので選ぶのに苦労しました。
なのでRLL2008ベスト10冊にand more10冊(以上)、それにクルー3人それぞれ10冊で50冊選びました!

ひとつ前のブルータスNO.654が『「生き方」を考える本。2009年のキーパーソン30人を知る本ガイド』特集、今出ている最新エスクァイア2009年2月号が『見せたい本棚の作り方。』でした。
ですけどね、人文系や社会科学なんか全く出版されてないみたいなブックセレクト、ちょっと疎外感ありますよ。ですので世間様とは違うキャラ立ちしたセレクトになったんじゃないすかね?




RLL 2008′S BEST BOOKS
今年は都市と労働のことについて、つまり生きる環境についての本に目が行った。


1.松本哉『貧乏人の逆襲 タダで生きる方法』筑摩書房
2008年、4冊も松本哉の書籍が出版されるという、高円寺北中通りの隙間に素人の乱が生まれた当時では考えられないような異常事態が発生。やっと時代が追いついたか。その快進撃の皮切りとなったのが本書。爆弾の作り方、海賊放送、万引き、無賃乗車、身分証明書偽造などのやり方を説いた70年代イッピーのバイブル、アビー・ホフマン『この本を盗め』の現代高円寺版か、はたまたマヌケかつカゲキな現代の異形落語か。
http://www.chikumashobo.co.jp/special/binbouninnogyakushu/


2.ポール・ラファルグ『怠ける権利』平凡社ライブラリー
ハーポ部長が就活時に丁度読んでいたボブ・ブラック『労働廃絶論』にも引用されていた、伝説のバイブル復刊。マルクスの娘婿でリーゼントの黒人ポール・ラファルグに「怠けろ!」とアジテーションされたら、一気に労働教から目覚めてしまうっしょ。「労働は1日3時間までで、あとは自分の時間」なんて最高の人生!アウトノミア時代のネグリのテーゼ「労働の拒否」百年先行く斬新さ。
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/frame.cgi?page=query.cgi&series=hl


3.マウリツィオ・ラッツァラート『出来事のポリティクス—- 知‐政治と新たな協働』洛北出版
G8対抗サミットで来日してRLLのTシャツプレゼントをしたラッツァラートの初邦訳。社会学者で哲学者で活動家でもある彼の言説はタルド研究者のドゥルージアンらしく、ぐるぐると差異と反復を繰り返しながら社会科学と現代思想とアジテーションを「パッチワークとネットワーク」の思考で織り込んでいく。僕らの創造性(脳の協働)をたえず捕獲していく企業といかに対峙するかって永遠の課題だね。
http://www.rakuhoku-pub.jp/book/27071.html
http://rakuhoku.blog87.fc2.com/blog-entry-191.html


4.ジョック・ヤング『後期近代の眩暈(めまい)—-排除から過剰包摂へ』青土社
この10年あまりの価値ある社会学の英知を引用しまくって、ネオリベ10年先どる英米を活写した、アクチュアリティある一冊。後期近代というタームで解析される現在、報酬とアイデンティティの二重の非合理の中に居る僕ら。ギャングとセレブから読み解く経済的構造的排除と倫理的文化的承認の包摂、アンダークラスの境界を他者化と不可視化する自己中なダブルスタンダードにクラクラと眩暈がしてくる。とにかくマスト!
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B8%E5%B4%FC%B6%E1%C2%E5%A4%CE%E2%C1%DA%F4
http://book.asahi.com/review/TKY200810280098.html


5.マイク・デイヴィス『要塞都市LA 増補新版』青土社
日本初のゲーテッド・コミュニティ誕生の年に、伝説の名著に序文を加えた増補新版で復刊!光と闇のネオリベが20年先を行くディストピアを、精肉工場の工員や長距離トラックの運転手などを経た叩き上げ学者が「俺の街LA」として熱く分析。監視カメラでがんじがらめられ、職質溢れる東京の夜警っぷりに、その追随を実感せずにいられない。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%CD%D7%BA%C9%C5%D4%BB%D4%A3%CC%A3%C1%A1%A7%CC%DC%BC%A1
http://www.amazon.co.jp/dp/479176434X/


6.ロイック・ヴァカン『貧困という監獄』新曜社
ブルデューのお弟子のフランスでのベストセラー年末に発売!装幀は気流舎図案室。福祉国家を解体し貧困問題を犯罪に摺り替えながら、労働市場の規制緩和によって監獄まで民営化する小さな政府。貧しきは罰せよ!と押し進める狂気の刑罰国家は日本の未来か。
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1140-8.htm



7.パオロ・ヴィルノ『ポストフォーディズムの資本主義 社会科学と「ヒューマン・ネイチャー」 』人文書院

ラッツァラート、デビッド・グレーバー、マイケル・ハートらネグリ以降の知識人の一人、イタリアの哲学者パオロ・ヴィルノの新刊。人間的能力のすべてを労働へと動員し、その生物としての存在を剥き出しにするポスト・フォーディズムの資本主義の本質を鮮やかに分析。フレキシブルな雇用能力を常に強要され、不安定さを綱渡りで生きていかざるをえない非正規労働者必読の書。
http://www.jimbunshoin.co.jp/mybooks/ISBN978-4-409-03075-2.htm
http://www.honya-town.co.jp/hst/HTdispatch?nips_cd=9983032937


8.フェリクス・ガタリ『三つのエコロジー』平凡社ライブラリー
誰もがうさんくさいエコブームにうんざりしていたタイミングに平凡社ライブラリーから文庫化された「横断性の専門家」ガタリの1991年の名著。彼の言うエコロジーとは、環境のエコロジーだけでなく、社会のエコロジー、精神のエコロジーを含んでおり、その三つのエコロジー概念が哲学と交錯するあり方をエコゾフィーと呼ぶ。「不機嫌な職場」をサバイヴするオフィス労働者にとって、精神のエコロジー問題は切実だ。
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/frame.cgi?page=query.cgi&series=hl
https://www.honya-town.co.jp/hst/HTdispatch?nips_cd=9983679981


9.アントニオ・ネグリ『野生のアノマリー—-スピノザにおける力能と権力』
僕らのネグリ来日中止のショックを癒してくれた、1979〜80年にイタリアの監獄内で執筆したドゥルーズも絶賛のスピノザ論。スピノザのおかげでネグリは逆境を生き延び、奇跡的復活を成し遂げたのだった。僕らの窮状も、このネグリの著作によって転覆したいものだが、なにせ分厚い哲学書なので完読できず、癒されるどころか苦境が続いているのが正直なところ。
https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22032.htm
http://urag.exblog.jp/7646372/


10.ジュディス・バトラー『自分自身を説明すること 倫理的暴力の批判』月曜社
とうとうバトラーはフェミニズムから倫理学へ進出し、フーコーを継ぎ、そしてアドルノとレヴィナスという最上のネタへ箸を付けた。アドルノ「道徳性、あるいは道徳に関するすべての観念は、行為する「私」に関連している」、レヴィナス「迫害は迫害された者にとって責任を生み出す」、フーコー「私の問題は真理であり、真理を述べることと反省性との、つまり自己の自己に対する反省性の諸形式との関係」とを縫い付けるバトラーの主張「自分自身に根拠=責任を与えること」。これはもしかしたら、無為の(ナンシー)明かしえぬ(ブランショ)何も共有していない(リンギス)無能な(田崎)者たちの共同体をバタイユの真裏から掘り当てる作業ではないだろうか。
http://getsuyosha.jp/kikan/butlerGAO.html




その他の2008年良書

・二木信 松本哉 編『素人の乱』河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309244471

・毛利嘉孝『はじめてのDiY 何でもお金で買えると思うなよ!』ブルース・インターアクションズ
http://www.bls-act.co.jp/books/show/92

・フランツ・ファノン『革命の社会学【新装版】』みすず書房
http://www.msz.co.jp/book/detail/07401.html

・アンジェラ・デイヴィス『監獄ビジネス—-グローバリズムと産獄複合体』岩波書店
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/5/0224870.html
http://book.asahi.com/review/TKY200810210107.html

・アントニオ・ネグリ&マイケル・ハート『ディオニュソスの労働–国家形態批判』人文書院
http://www.tokyo-np.co.jp/book/shohyo/shohyo2008060104.html
http://urag.exblog.jp/7040171/

・シャンタル・ムフ『政治的なものについて』明石書店
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20081014bk06.htm
http://kazuyaserizawa.com/transynodos/?p=10

・佐藤嘉幸『権力と抵抗』人文書院
http://urag.exblog.jp/7468545/

・今福龍太『群島ー世界論』岩波書店
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/5/0226210.html

・田崎英明『無能な者たちの共同体』未来社
http://db1.dcube.co.jp/miraisha/search/FMPro?-db=miraisha%5fdb.fmj&-format=detail.html&-lay=cgi&-sortfield=%94%ad%8d%73%93%fa&-sortorder=descend&-op=cn&%92%98%96%f3%8e%d2=%93%63%8d%e8%89%70%96%be&-max=15&-recid=34291&-token=12737041&-find=

・平井玄『千のムジカ 音楽と資本主義の奴隷たちへ』青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%C0%E9%A4%CE%A5%E0%A5%B8%A5%AB

・栗原康『G8サミット体制とはなにか』以文社
http://news.ohmynews.co.jp/news/20080704/27012

・ブルーノ・ラトゥール『虚構の「近代」—-科学人類学は警告する』新評論
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2008/08/20080831ddm015070032000c.html




∞+∞=∞ 2008年10冊

1.ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』河出書房新社 人間の文学(1965)
突然、透明でどうしようもない衝動がやってきてフレームをぶち壊す。あらゆるものがどろどろに溶け出し、重なり合い、奪い合い、歪み、ひとりでに歌いだし、交じり合い、泣き言をぶちまける。細胞の一つ一つが独立を宣言し、その中で分子が内戦を開始し、原子とクォークがゲリラ戦をおっぱじめた。ちっぽけな、でも膨大な国や民族や皇帝や英雄や、乞食や落ちこぼれたやつらが溢れ出し、君を満たし、君は霧散する。これは決して麻薬のせいなんかじゃない。何もかもが正気だ。ライプニッツの言葉を思い出せ。「私の中にあらゆるものが入ってきて、あらゆるものが出て行く」
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0822.html
http://d.hatena.ne.jp/ziprocker/20080905


2.ヒューバート・セルビーJr『ブルックリン最終出口』河出書房新社 人間の文学(1968)
「幸福はどれもそっくりで退屈だが、悪には一つ一つ個性がある」と言ったのは、誰だったか…50年代のブルックリンのゲットーで、限りなく、だらしなく、堕落し、それでも、ちっぽけな幸福や気の遣り場や、束の間の温もりを求めて彷徨う人々を襲う、あっけなくも残酷な暴力とエロスと、死の、数々。息の長い独特の文体がスローモーションで滑り出した転落の速度を描き出し、その中でフラッシュを焚かれて浮かび上がる人々の肢体は、愛撫され、引き裂かれ、へし折られ、反吐や血や精液にまみれて動かなくなる。このいやらしくも完璧な残酷さは初期大江健三郎に、そして全てのキャラクターへの透明な愛は、織田作之助に似ている。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309460680


3.ヘンリー・ミラー『北回帰線』新潮社(1969)
畜生!!こんなにも声高に気持ちよく自分を叫びつづける男がいたなんて!!「僕には金が無い。資力も無い。希望も無い。僕はこの世で一番幸福な人間だ」言葉とほんのわずかのメロディとイメージだけを持つ者に幸あれかし!!下水道に、道端の反吐に夕陽を受けて銀河のように輝く、路上に張り付いたガムの群れに幸あれ!!クソったれな人生に、オマンコに、詩に、街灯に、言葉の爆弾を投げつけろ!「匿名で…僕達は時代を使い果すだろう。僕達以後、 1冊の本もなくなるだろう…いまや僕達は力強い生命の流れを注ぎ込むべき容器を持つにいたったのである。そいつを投げつけると、世界中がぶっ飛んでしまうような爆弾となるだろう」
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0649.html
http://www.shinchosha.co.jp/book/209001/


4.パール・バック『大地』新潮社(1954)+ユン・チアン『ワイルド・スワン』講談社(1993)
「神よ願わくは我に与えたまえ 変えられるものを変える勇気を 変えられないことを受け入れる忍耐を そして 両者を見極める知恵を 」
あまりにも複雑で巨大なシステムの中で、自分が、そして自分の親しい人々が、どうしようもなくちっぽけで無力なものにすぎないということや、この世界には、ただただ無数の、切れることの無い出来事の無辺の連続だけが存在し、人はそのわずかな部分を意識したり、解釈したり、感じたりするだけで、幸福や、不幸や、運命や偶然や必然といった出来事のちっぽけな符丁など、何も意味を成さないのだと、どこまでも意識することができた時にやってくるのは、諦めでもなく、絶望でもなく、世界への畏敬であることを、たった数時間で経験させてくれる良書。中国という混沌を少しでも噛み砕くための必読書。
http://www.shinchosha.co.jp/book/209904/
http://www.amazon.co.jp/dp/4003232011


5.多和田葉子『犬婿入り』講談社(1993)
見知らぬ男がいきなり独身女性の家の中に入ってきてパンツと下着を脱がして肛門をペロペロし、半ばちんぽを無理やり突っ込んだというのに突然作り出した野菜炒めで自分の犯した罪を贖うつもりはこれっぽっちもなく、でも、なぜか、丸め込まされてしまうという、とんでもなくありえないシチュエーションを「これなら全然ありかも!!」とばっちし納得させてくれる文体と物語構成は只者ではない芥川賞受賞作。上手く出来た手品のような作品。化かされてください。
http://uraaozora.jpn.org/akuta108.html


6.宮本常一『イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む』平凡社ライブラリーoffシリーズ(2002)+『バートン・ホームズコレクション 激動の明治・大正写真展「日本と世界の風俗」』読売新聞社(1987)
http://www.j-cave.com/bunko/bk110.html
http://www.amazon.co.jp/dp/4582764533


7.植村直己『極北に駆ける』文春文庫(1977)+本多勝一『カナダエスキモー』朝日文庫(1981)
異文化を理解するだとか、調査するだとか、交流するだとかぬかす馬鹿は死ねばいい。文化とは見るものでも、聞くものでもなく、生きるものだということを否応無く伝えてくれる奇書。植村直己が文化人類学者ではなく、探検家であることが、つまり、エスキモー文化を研究したり、調査するのではなく、犬橇で極地を横断するためのサバイバル方法を会得するために、エスキモー文化を身に付けるために、まったく知人も伝手も無い僻地の村へ単身飛び込んで、食べ、狩猟し、駆け、排泄し、体当たりで交わった記録。文字通り泣きながら腐りかけたアザラシの生肉を食べ、連夜の若い女性の夜襲に怯え、公然と人前で尻を出して排泄し、犬橇の鞭を犬に食べられてしまったりしながら、エスキモーへと成っていく過程は、日本人であるというアイデンティティを形作る文化の壁を越えていく過程でもあり、グラグラと激しく揺らぐ自我の境界線を踏み越えていく最もスリリングな冒険でもある。
http://www.amazon.co.jp/dp/4167178028
http://kiviak.com/weblog/blog.cgi


8.空知力『青きドナウの乱痴気-ウィーン1848年』平凡社(1985)
革命がひしひしと迫り来る1848年ウィーンの空気感を絶妙に描き出した良書。売春婦やプロレタリアート達が、政府高官や高位聖職者、暴利をむさぼるパン屋や大家を掣肘するために、家の前で鍋や太鼓を担ぎ出して夜中に大騒ぎする「シャリバリ」は1848年のサウンドデモだ!
http://www.onyx.dti.ne.jp/~sissi/book40.htm


9.アサヒグラフ編集部『にっぽんコミューン』朝日新聞出版(1979)
68、9年を頂点に盛り上がった政治の季節の挫折から、生産と再生、自治を基調としたコミューン運動が盛り上がり、この国のあちこちに新たな共同体が生まれた。(もちろん、それ以前からの共同体も紹介されているのだが)


10.井原西鶴『西鶴全集』岩波文庫(1956)
「天地は万物の激旅。月日は百代の過客。」
胎動する資本主義とエロとアンシャンレジームの非合理の美しさが生み出した人情の綾なす世界。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003020456/


次点

11.唐沢俊一『古本マニア雑学ノート』(2000)
古本の魅力とは、まさしくエロ三行広告のように、わずかなタイトルや内容といった断片からその本を構成していた世界の全体や、辿ってきた数奇な歴史の全てを想像することにこそある。まるでミロのヴィーナスよろしく情報が欠けていることが、ほんのわずかな部分から全体を想像するというフェティッシュな行為となり、空想の全体性を完成させるという猟書行為の快楽の本質を成す。しかし、やはりそこにはスケベ心に付け込んで儲けようとする魑魅魍魎が跋扈する冥界で、ビブリオマニア達は棺桶に片足を突っ込んだミイラ盗りだ。フロベールの「愛書狂」に描かれたジャコモのように、罪作りな本は焼かれてこそ価値を生み出すのだろう。
http://www.amazon.co.jp/dp/4344400054
http://www13.atwiki.jp/tondemo/pages/74.html?PHPSESSID=d64b4fd4349529c29f37f932d7afad43&flag_mobilex=1


12.『科學畫報』新光社(1924)
科学が未だマッドでキッチュな錬金術であり、ナショナリズムと深く野合していた、あの、懐かしい時代を振り返るための資料集。
http://d.hatena.ne.jp/ziprocker/20081030




intellipunk 2008年10冊

1.そがしんいち『がちんこ農業生活 会社勤めよりは楽しいか?』ブルース・インターアクションズ(2008)
音楽出版社ブルース・インターアクションズから出版された農業本はひと味違う。同世代の一本筋の通ったトマト農家の情熱大陸より嘘のない告白。音楽ドキュメント本っぽい(?)カッコイイしんどい生き方がリアリティあっていいっす。
http://www.bls-act.co.jp/books/show/931


2.大牧冨士夫『あのころ、ぼくは革命を信じていた—-敗戦と高度成長のあいだ』編集グループ〈SURE〉(2008)

筆者の1944年16歳から1963年35歳までの個人回想録。少年通信兵〜郵便局員〜田舎の市井の共産党細胞、と連なる彼の経歴よりも印象的なのは、「世の中をよくしたい」と思いながらも世の中に巻き込まれた不安な生活するどこにでも居る若者、という趣。そのリアリズムは時代背景を抜かせば僕らに近い。
http://www.groupsure.net/index.html#kakumei




3.ポール・D・ミラー(a.k.a. DJスプーキー)『リズムサイエンス』青土社(2008)
音楽本として読むと類似書が浮かばない、レアでフェティッシュな本。人文書なら詩学(理論よか詩情が全部に勝ってしまう)になるのかな?そういう意味なら DJスプーキーはハイテクなグリッサンってことか!マジ一直線なプレカリアートな世界観とは違う、メタでサンプリングでポストモダン丸出しな世界観。だからこそ厳しい人にもっと読まれたらいいと思う、世界は豊かで音楽や文化は人を幸福にするから。 http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%EA%A5%BA%A5%E0%A1%A6%A5%B5%A5%A4%A5%A8%A5%F3%A5%B9


4.入江公康『眠られぬ労働者たち 新しきサンディカの思考』青土社(2008)
こっちもある意味詩学。労働問題やネオリベラリズムに対して、詩情の〈共〉で対抗しようとするのも有効なのかもしれないと思わせた。田崎さんの『無能な者たちの共同体』のラインなのかな? http://www.seidosha.co.jp/index.php?%CC%B2%A4%E9%A4%EC%A4%CC%CF%AB%C6%AF%BC%D4%A4%BF%A4%C1


5.ジャック・ランシエール『民主主義への憎悪』インスクリプト(2008)
日本の閉鎖環境も世界と同時進行で、民主主義への憎悪が芽生えている。毎度、造本の美しい出版社インスクリプトから出版された、前作『不和あるいは了解なき了解』で提出された民主主義の定義に従い、今作では流行する民主主義への憎悪を分析する。民主主義は、多数決のための投票制度でも、代表者が集う議会制度でもない(それらは「政治的なるもの」でしかない)。民主主義とは「言葉を持たない者」とされていた他者が発言すること声を上げることだ。今ある秩序を語りはじめた人々が揺り動かすことだ。制度の外から民主主義を再起動させよう
http://www.inscript.co.jp/books/ISBN978-4-900997-18-9.html
http://book.asahi.com/review/TKY200809230080.html


6.アントニオ・ネグリ『未来派左翼 グローバル民主主義の可能性を探る』NHKブックス(2008)
ここで揶揄されるオールドスタイル左翼の固定観念から、どこまで自由になれるか。それがクリエイティブに抵抗するという未来派スタイルらしい。この時代の潮目で、固い頭をリフォームするにはすごくいい。マドリードにパリ、シアトルやブラジルやチアパス、世界各地でニュータイプが生まれている。中途半端な社民主義や古い前衛党左翼は、そのスタイルを変えるリニューアルなタイミングだよ!
http://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=0130&webCode=00911062008
http://book.asahi.com/topics/TKY200804280175.html


7.ジル・ドゥルーズ『シネマ1 *運動イメージ』法政大学出版局(2008)
やっと出た!ドゥルーズの本で残されていた最後の翻訳書。これで自分が死ぬまでには全部読める楽しみが出来た。映画を批評することはつまり、世界を解釈することに等しい。その意味でドゥルーズ哲学の応用的使用法をそこで体得出来るドゥルージアンへの入門書。
http://www.h-up.com/2008-10.html
http://urag.exblog.jp/7538370/


8.デヴィット・ハーヴェイ『新自由主義 その歴史的展開と現在』作品社(2007)
新自由主義とは、資本家階級による資本再奪還のためのミッションであったと喝破される。そのためには手段を選ばないということを、左派地理学(原蓄!)や都市社会学の研究から解き明かす。格差社会とか規制緩和とか経済問題じゃねーネオリベというイデオロギーが問題だ。これは下手な陰謀論より根が深い。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0500hd.htm


9.上林澄雄『日本反文化の伝統–流行性集団舞踊狂の発生根拠としての』エナジー叢書(1973)
今では講談社学術文庫にも入っているようだけど、最初この本はまんまとエッソ石油から出されている、テーマがテーマなので少しほくそ笑む。大きく日本の歴史上ずーっと、政治体制の変化や社会変動が起こる少し前から「えーじゃないか」「おかげ参り」「ぬけ参り」「伊勢踊り」「念仏踊り」「異形群舞」「一向踊躍」「奈良踏」などなどなどが起っているらしい。レイブやサウンドデモを思い出させるのも無理はなく、グッとくる。
http://www.amazon.co.jp/dp/B000J9GKCE


10.宮本常一『忘れられた日本人』岩波文庫(1984)+網野善彦『『忘れられた日本人』を読む』岩波書店(2003)
7月海外から来たサミットホッパーに仕込まれた合意形成のやりかた。それに近似した形はこの本の「対馬にて」村の寄りあいの「とり決め」が描かれている。G8対抗オルタナティブキャンプの中で読み終えたときのシンクロったら!昔の日本に住む人々の自治や人生のルールをひも解けば、驚くほどアナーキズム文化人類学に似てくる。国民国家がいかに歪んだ統治かと、その豊かな共治をみれば実感出来るだろう。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/book/kyushu100/2006/04/post_14.shtml
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0239.html




HarpoBucho 2008年10冊

1.ロイド・ブラッドリー『ベース・カルチャー レゲエ〜ジャマイカン・ミュージック』シンコーミュージック(2008)

http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail-0631455.html


2.篠原雅武『公共空間の政治理論』人文書院(2007)
http://www.arsvi.com/b2000/0708sm01.htm
http://www.econ.hokudai.ac.jp/~hasimoto/Book%20Review%20on%20Shinohara%20Masatake.htm


3.柳澤田実ほか『ディスポジション:配置としての世界』現代企画室(2008)
http://liv-well.org/disposition/


4.エドワード・S・リード『アフォーダンスの心理学—-生態心理学への道』新曜社(2000)
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0743-9.htm


5.ジル・ドゥルーズ『スピノザ 実践の哲学』平凡社ライブラリー(2002)
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/31014855


6.ジョゼフ・W.ミーカー 『喜劇とエコロジー–サバイバル原理の探求』(1988)
http://books.livedoor.com/item/1493620


7.今村昌平『今村昌平のええじゃないか』アシーネ(1981)


8.河野哲也『善悪は実在するか–アフォーダンスの倫理学』講談社選書メチエ(2007)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062583992_1.html


9.エドワード・W・ソジャ 『第三空間 ポストモダンの空間論的転回』青土社(2005)
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%C2%E8%BB%B0%B6%F5%B4%D6


10.玉虫 敏子『都市のなかの絵 酒井抱一の絵事とその遺響』星雲社(2004)
http://store.shopping.yahoo.co.jp/7andy/31397413.html








RLL 2008′S BEST iTEM

・magazine『VOL 3』以文社(2008)
・magazine『K8 vol.00』こだま屋(2008)
http://www.kodama8.com/news
・magazine『オルタ 2008年9・10月号』PARC
・zine『合意形成、その促進そして解放—-合意形成プロジェクト』ロックダブコレクティブプロジェクト poetry in the kitchen翻訳部(2007)
・zine『VOL zine no.01〜06』VOL編集委員会(2008)
http://conflictive.info/contents/volzine.htm
・フリーペーパー『東京なんとか』(2008)
http://irregularrhythmasylum.blogspot.com/2008/12/20091-poetry-in-kitchen-ira.html
・画集『ブラックパンサー エモリー・ダグラスの革命アート集』ブルース・インターアクションズ(2008)
http://diskunion.net/black/ct/detail/50B080401001
・『素人の乱12号店 エンジョイ北中ホール(仮)』
http://trio4.nobody.jp/keita/shop/12/index.html
・FILASTINEの反G8アクションMIX『NO G8 ACTION JAPAN BENEFIT』(2008)
http://irregularrhythmasylum.blogspot.com/2008/01/infernal-noise-brigade-filastine-cd.html
・『Deep Root Music』1〜3(2008)
http://reggae-store.com/catalog/851-90.html


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  • By intellipunk / Jan 15, 2009 9:33 pm

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